設立趣意

設立趣意書

 21世紀初頭、日本の防災戦略の大幅な見直しに伴い、中京圏広域が東海地震に係る地震防災対策強化地域や、東 南海地震・南海地震に係る地震防災対策推進地域に相次いで指定され、地域の特性に応じた防災戦略の探究が急務となった。このため約二万人の構成員を持つ名 古屋大学は、本学自身の防災力を強化して足下を固めつつ、地域の防災力向上に地域社会と共に取り組むため、平成14 年10 月、人文・社会・自然の学問の壁を越えた実践研究の推進の場として名古屋大学災害対策室を設置した。

 我が地域は、明治以降、濃尾地震・東南海地震・三河地震という死者千人を超す大震災や、伊勢湾台風・東海豪雨 という甚大な風水害を経験し、歴史的にも幾多の大災害を被ってきた。近未来の災害軽減を真に望む時、これらの災害の悔恨や教訓はかけがえがないものであ り、それらを防災に活かすためには、学際的・社会的英知を結集させる必要がある。

 平成15 年4 月、名古屋大学は、自然災害に関する学際研究を俯瞰的立場から推進するため、地域防災研究分野を環境学研究科附属地震火山観測研究センターに設置し、同セ ンターを地震火山・防災研究センターに改組した。また真の地域防災は地域社会との協働なくしては成り立たないとの観点から、防災研究における社会連携体制 を強化すべく災害対策室を拡充・整備した。

 このような経緯に鑑みて、名古屋大学災害対策室の任務の第一は、安心・安全なキャンパス整備・維持活動の支援 であり、専門的見地から学内の防災・危機管理体制の充実に向けた方策を立案するとともに、各部局の責任で行うべき平時の予防活動及び発災時の応急活動を支 える。第二は、地域社会における防災協働体制の構築を目指す実践研究ならびに社会連携活動であり、学内の防災関連研究者や地域の防災関連機関と一致協力し て、地域防災を強力に推進する。第三は、地域防災の実現を目指す新たな文理融合型研究開発の推進である。適正な防災水準についての社会的合意形成や、中長 期的地域防災計画のあり方をも視野に入れた、産・学・行政・市民連携の協働プロジェクトを進め、それらの具体的実践研究の成果を地域防災学として結実させ る。

 

平成16 年4 月1 日 名古屋大学